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鼻水、のどの痛み、咳、などのいわゆる「かぜ」症状や発熱が見られたときに、かぜ以外の病気の可能性も考えられます。「かぜをひいたな」と思った時に最も大切なのは、これら「かぜ以外の病気」と「かぜ」を間違わないことです。通常、かぜならば自然に治りますが、かぜ以外の病気では治療の遅れが重大な結果をもたらすことがあるからです。以下にかぜ症候群と区別しなければならない代表的な疾患を上げてみます(順不同)。

溶連菌感染症:A群β溶血性連鎖球菌という細菌の感染により引き起こされる疾患です。咽頭痛が強く、のどが赤く腫れます。抗生物質が著効しますが、治療が不十分だと急性腎炎やリウマチ熱の危険がありますので、きちんと治療することが大切です。

細菌性肺炎:肺炎はかぜ症候群の一病型としてもとらえられており、普通のかぜに続発する場合も少なくありません。肺炎の原因にはいろいろありますが、細菌による肺炎を細菌性肺炎と呼びます。肺炎球菌・インフルエンザ菌、肺炎桿菌、ぶどう球菌などが起炎菌として上げられます。起炎菌や発症年齢によって病態は変わりますが、発熱・咳・痰を主症状とし、胸痛や呼吸困難などがみられます。胸部レントゲン検査で診断されます。軽いものは外来加療で治癒しますが、入院が必要となることも少なくありません。

肺結核:咳が長く続き、微熱(寝汗をかく)がみられる時には、肺結核を疑って、胸部レントゲン検査などを行う事が大切です。少なくなったとはいえ、結核は無くなったわけではありません。

胸膜炎:胸膜(肺を包んでいる膜)の炎症で、細菌、結核菌、癌などが原因となります。発熱・胸痛・咳などがみられ、胸水がたまります。聴打診所見からその存在が疑われ、胸部レントゲン写真で診断されます。

肺癌:いわゆる癌年齢の方、ヘビースモーカーの方は要注意。なかなかかぜが治らないと言う場合に、肺癌だったりすることがあります。胸部レントゲン検査、CT検査、痰の細胞診、気管支鏡検査などにより診断されます。

クループ症候群:声を出すところ(喉頭といいます)が細菌やウイルス感染により炎症を起こしてはれる病気で、犬が遠吠えするときのような独特の咳がでます。ひどくなると息を吸うときにぜーぜーと音がするようになります(喘息または喘息性気管支炎の時は、息を吐くときに音がしますので区別できます)。乳幼児では、夜間突然呼吸困難発作(息苦しがり、息を吸うときに音がでる)を起こすことがありますので、早めの治療が大切です。寒い季節に多く、3カ月〜3歳に好発し、6歳以降はまれです。

伝染性単核症:Epstein Barrウイスルやサイトメガロウイルスにより引き起こされる疾患で、発熱、咽頭炎、扁桃炎、リンパ節腫脹などで発症します。肝機能障害の見られることもあります。診断には血液検査が必要です。

急性肝炎:発熱・頭痛・咽頭痛などのかぜ症状で発症することがあります。経口感染するA型肝炎とE型肝炎に注意が必要です。全身倦怠感(だるさ)が強いのが特徴。黄疸が見られる時には可能性が強まります。診断確定のためには、血液検査が必要です。

急性腎盂腎炎:腎実質の細菌感染症です。悪寒(さむけ)・戦慄(ふるえ)を伴った高熱がみられ、腰の付近をたたいて痛がるときには、本疾患が疑われます。排尿時痛などの膀胱炎の症状が先行する事もあります。尿検査と血液検査を行い診断します。

麻疹:はじめ熱・咳・鼻水・目やになど通常の風邪と同じ症状が出ます。この時期には麻疹と診断する事はできません。4日目位に一度熱が下がりますが、半日から1日後に高熱とともに発疹がでます。発疹はほぼ円形の紅い斑点で5mmくらい。顔からはじまり全身へと広がっていきます。約5日くらいで熱もさがり、発疹も消えてきますが、高熱が1週間以上続きますので、早めに予防接種を受けておくことが大切です。 

風疹:風疹ウイルスの飛沫感染により発症します。3日ばしかとも言われ、軽い発熱とともに顔や首などに小さくて赤い発疹がでます。耳の後ろや首のリンパ腺が腫れて押すと軽い痛みがあります。熱は出ないこともあり、風疹以外にも同じ様な症状を示すウイルス感染症(感冒性発疹)がありますので、確定診断には血液中の抗体を調べる必要があります。

髄膜炎:主としてウイルスの感染により、発熱と髄膜刺激症状(頭痛・嘔吐・項部硬直)などの症状を呈する急性感染症です。高熱に頭痛と嘔吐が伴い、重症感のある時には、本疾患を疑って必要な検査をすることが大切です。

アレルギー性鼻炎:通常季節性で、透明な鼻水に目のかゆみ(アレルギー性結膜炎)を伴う場合には本疾患の可能性が高くなります。アレルギーの検査をする事により、診断が確定します。通常、発熱や咳はみられません。

急性中耳炎:通常、耳の痛みが見られます。乳児などでは、発熱のみで、いわゆるかぜ症状が無い場合には、本疾患を疑ってみる必要があります。

その他:膠原病なども発熱で発症することがあります。熱以外に膠原病に特有の症状が色々な組み合わせでみられますので、かぜとの鑑別はさほど難しくありません。