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現在、糖尿病の診断にはWHO、日本糖尿病学会、米国糖尿病学会(ADA)などの診断基準が使われていますが、最近の糖尿病の成因に関する基礎的・臨床的な研究により、いくつかの点で問題があることが指摘されています。今回これらの問題点を解決すべく、1997年6月に米国糖尿病学会は新しい診断基準を発表しました。ここではその基準を取り上げてみます。


新しい糖尿病分類(表1):今回のADAによる新しい糖尿病の分類では、β細胞の破壊によりインスリンの絶対的な不足をきたして発症する糖尿病を1型と呼び、インスリン抵抗性の増大とインスリン分泌の不足によりインスリンの作用不足をきたして起こる糖尿病を2型(いずれもローマ字数字は使わない)としました。さらにその他の原因によるものの他に、胎児への影響を考慮し妊娠糖尿病を独立させました。

表1:糖尿病の新分類(ADA、1997)
T. 1型糖尿病:β細胞破壊によりインスリンの絶対的不足を来たし発症する糖尿病 
A.免疫学的過程による
B.特発性:自己免疫学的機序などの証明されていない場合
U. 2型糖尿病:
V. その他の病気
A.β細胞の遺伝的異常
B.インスリン作用の場の遺伝的異常
C.膵外分泌組織の病変によるもの
D.内分泌疾患によるもの
E.薬剤及び化学物質によるもの
F.(ウイルス)感染によるもの
G.まれな免疫学的機序によるもの
H.他の遺伝性症候群に伴うもの
W. 妊娠糖尿病

新しい診断基準(表2):今回のADA案では、WHO案と比較して、空腹時血糖と75gOGTTの2時間値を全く独立させて定義していることが注目されます。。
 
表2:新しい糖尿病診断基準(ADA、1997)
1:多尿、多飲、体重減少などの糖尿病症状かつ随時血糖値≧200mg/dl
2:空腹時血漿血糖値(FPG)≧126mg/dl(絶食時間は最低8時間)
3:75gOGTTの2時間血漿血糖値≧200mg/dl
上記3項目のいずれかを満たし、かつ翌日以降の再検査で、上記の条件を満たせば糖尿病と確定診断できる。

耐糖能異常 IGT=impaired glucose tolerance:75gOGTTで、200mg/dl>2時間値≧140mg/dl
IFG=impaired fasting glucose:126mg/dl>FPG≧110mg/dl
血糖調節正常群 NGT=normal glucose tolerance:75gOGTTで、2時間血漿血糖値<140mg/dl
NFG=normal fasting glucose:FPG<110mg/dl