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日本動脈硬化学会が1995年に「高脂血症診療ガイドライン」検討委員会を発足し、検討を重ねてきた新しい高脂血症診療ガイドラインが、正式に発表されました。

高コレステロール血症診断基準:高コレステロール血症の診断基準値を220mg/dlとしました。また、今回初めて治療の基本である生活習慣の是正効果と治療に柔軟性を持たせるために、正常値との間に境界域を設けました。

血清総コレステロール LDLーコレステロール
コレステロール値適正域 200ml/dl未満 120mg/dl未満
コレステロール境界域 200〜219mg/dl 120〜139mg/dl
高コレステロール血症 220mg/dl以上 140mg/dl以上

高コレステロール血症の治療適応基準:冠動脈疾患の有無、動脈硬化危険因子の有無により治療適用基準に差が設けられました。これは、WOSスタディなどの大規模臨床試験の結果を踏まえ、科学的な立証に基づき検討されたことによります。今回注目すべき点は総コレステロールよりもLDLコレステロールが指標として重視されたことです。総コレステロール値は中性脂肪値(TG)によって、かなり影響をうけますので、非常に好ましいことと考えられます。
  1. 冠動脈疾患の合併がなく、高コレステロール血症以外の動脈硬化危険因子がない場合、まず生活指導、食事療法を行う。少なくとも数ヶ月間、食事療法を励行しても、LDLコレステロール>160(血清総コレステロール値>240)の症例では薬物療法の適応となる。
  2. 冠動脈疾患の合併はないが高コレステロール血症以外の動脈硬化危険因子(表1)があり、LDLコレステロール>140(血清総コレステロール値>220l)の時は薬物療法の適応を考慮する。
  3. すでに冠動脈疾患を発生している場合は、食事療法後でもLDLコレステロール>120(総コレステロール>200)の時には薬物療法を開始する。治療目標はLDLコレステロール<100(総コレステロール<180)
表1(動脈硬化危険因子) 危険因子ありに該当する場合
加齢・性別 男性:45歳以上、女性:閉経後
冠動脈疾患の家族歴 あり
喫煙習慣 あり
高血圧 140 and/or 90以上
肥満 BMI>26.4
耐糖能異常 境界型または糖尿病型

高中性脂肪血症の基準値:中性脂肪は、食後に測定した場合、その値は何の意味も持ちません。採血前日のアルコール飲用を避け、10時間以上の絶食後に測定された値が150mg/dl以上の時、高中性脂肪(トリグリセライド)血症と診断されます。

低HDLコレステロール血症の基準値:HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)は、40mg/dl未満の場合、冠動脈硬化の危険因子と考えられています。ですから、40未満の場合は、低HDLコレステロール血症と診断され、治療の対象となります。