土川内科小児科ニュース  7月号  No.42 もどる

  今月のテーマ:予防接種について

今年になり、安達医師会管内では、麻疹の小流行がありましたが、6月になりようやく落ち着いた様です。この流行で、麻疹に罹患したのは、皆さん予防接種を受けていなかった方で、特にある小学校では、その学年で麻疹の予防接種を受けていなかった児童7名中6名が麻疹に罹患しました。また私の診療所では、6人兄弟が麻疹の予防接種を受けていた1人を除いて、全員が次から次へと麻疹に罹患したケースを経験しました。定期接種の対象となっている感染症はどれも罹患すると大変なものばかりですので、はじめにしっかりと計画を立てて、上手に受けてほしいと思います。 予防接種に関する特集は平成9年4月(第3号)に一度取り上げていますが、今回はちょっと切り口を変えて、予防接種についてより具体的に考えてみたいと思います。
定期接種として受ける予防接種は、BCG、ポリオ、三種混合、麻疹、風疹、日本脳炎がありますが、これらの接種回数を合計すると12回にもなります。従って計画性を持ってこなしていかないと、未接種のまま時間がどんどん過ぎていってしまう事になってしまいます。
予防接種には生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があり、生ワクチンは接種後4週間あけないと次のワクチンは受けられません。これに対して、不活化ワクチンは1週間で次のワクチンが受けられるようになります。
具体的に、1歳までに受けておくべきワクチンは、BCG、三種混合、ポリオの3つ。4ヶ月になったら、まず、三種混合ワクチンの第一期1回目を受けましょう。三種混合ワクチンは乳幼児の時期に受けるのは、3週間〜8週間の間隔で合計3回、その約1年後1回の計4回です。小さいうちは良く熱を出しますので、はじめの3回は3週間間隔で受けるつもりでいて、風邪などのために少々遅れてもそれぞれの間隔が8週以内に収まるような工夫が大切です。8週をすぎると絶対にダメではありませんが、効果が薄れてしまいますのでご注意下さい。
BCGは、ツベルクリン反応で陰性を確認後に実施しますが、個別接種ですので三種混合が終了した時点で受ければ良いでしょう。三種混合の前に受ける事も可能です。
問題はポリオです。ポリオは集団接種で行われるため、受けることのできるチャンスが限られています。幸い、日本では野生株によるポリオの発症はありませんので、あわてて受ける必要はありませんが、1歳前に1回は受けておくと安心です。ポリオの日程は変更できませんので、ある程度はポリオに合わせて他のワクチンの日程を調整しなければならないでしょう。ただ、ポリオを受けるために他のワクチンの接種が大幅に遅れるような場合には、ポリオが後回しになってもかまわないと思います。
1歳のお誕生日が過ぎたら、真っ先に受けたいのが麻疹ワクチンです。麻疹は罹患するととても怖い病気ですが、今回の流行でも証明されたように予防接種の効果は抜群ですので、辛い思いをさせないためにも早めに受けておきたいですね。
麻疹のあとは、余裕を持って風疹を受け、3歳すぎたら日本脳炎をはじめの年に2回、翌年1回で終わりです。日本脳炎は季節性の強い疾患ですので、夏直前(6月)に受けるのがベストです。
何らかの理由で遅れてしまった場合は、できるだけ早く予防接種に詳しい医療機関で対応を相談して下さい。色々なケースがありますので、ここでは詳細に触れませんが、遅れたことによるマイナスをカバーするのには対応が早ければ早いほど有利です。どうせ遅れてしまったからいつでもいいやなどと言うような事がないようにお願いします。
予防接種を受ける時間は、午後二時頃までがベスト。私の所では、午後の一時から二時に限定して行っているのには訳があります。まず第一に「予防接種は一般外来とは分けて行うこと」となっています。これを無視して行った場合には、副反応が起きた時などに国の保証が受けれられない可能性があります。そこで、一般外来とは別に午後の早い時間を予防接種の専用時間帯とし、一般外来の患者さんは原則として受け付けない様にしています。また、予防接種後の副反応のうち、重篤なものは6時間以内に起きる可能性が高いので、万が一の時に対応を依頼する可能性のある後方病院が手薄になる夕方は避け、午後の早い時間に行う様にしております。
予防接種はどこで受けても同じではありません。お子さんの事を良く知っているかかりつけ医、予防接種の経験が豊富で、製剤の改良などの情報に明るい専門医が望ましい事は言うまでもありません。
予防接種を受ける午後一時頃の普段の体温をあらかじめ測って知って置いて下さい。ご存じの様に37.5℃以上あれば、予防接種はできませんが、37℃前半の場合、普段通りなのか、今日はいつもよりも高く、夜にもっと高くなる可能性があるのかの区別が難しい時が良くあります。一般的に午後の体温は朝の体温よりも高く37℃前半というお子さんも結構いらっしゃいますので、普段通りなのかどうかの判断ができるようにしておく事は非常に大切なことです。
予防接種のスケジュールを立てるのは慣れないと難しいので、受けた後に次は何を受ければ良いのかについてのアドバイスを受け、参考にする事をおすすめ致します。
ポリオワクチンの予防接種の今後の取り扱いについて        (平成12年6月16日) 厚生省発表資料より
1.5月16日、ロット39の製品であるポリオワクチンの予防接種を見合わせるよう(財)日本ポリオ研究所に対し供給先に情報提供するよう指示するとともに、各都道府県に連絡していたところです。
2.今般、6月7日に開催した公衆衛生審議会感染症部会及び6月15日に開催した中央薬事審議会医薬品等安全対策特別部会においてロット39の製品であるポリオワクチンの品質・安全性に問題ないことが確認されましたので、6月15日、その旨を(財)日本ポリオ研究所及び各都道府県に通知しました。
3.ただし、公衆衛生審議会感染症部会において、今後ポリオ様症状を呈するエンテロウイルスによる感染症の流行期となること、国民に対する十分な普及啓発及び今回と同様の事例が発生した場合の対処方法の検討等を行い円滑な接種再開をする必要があることから、秋に向けて慎重に対応すべきとの指摘があり、同部会の下に小委員会を設け、検討を進めることとなりました。
4.3のような公衆衛生審議会感染症部会の指摘等を踏まえ、秋の予防接種時までの間、以下のような対応をとるよう、6月15日、各都道府県を通じて各市町村を含む関係者に通知しました。
 (1) 夏期は、エンテロウイルス感染症の流行期となるので、例年どおり予防接種法に基づくポリオの予防接種は基本的に差し控えてください。
 (2) しかしながら、予防接種法施行令に定める接種期間が秋までに終了する者に係る場合や流行地への海外渡航等予防接種の緊急性の高い場合に、本人や家族に十分な説明をした上で行う個別の予防接種については、この限りではありません。
インフルエンザワクチンの接種は成人は1回でも可 生物学的製剤基準が平成12年6月より一部改正となり、高齢者や基礎免疫を期待できる成人では、これまで2回行われてきたインフルエンザワクチンの接種を1回でも可となります。1回の接種で十分な抗体価上昇を得られる場合が多いとの研究報告に基づき、「添付文書等記載事項」として定めている用法及び用量に「1回又は」が追記されることによります。なお、13歳未満については用法及び用量に変更はなく2回接種です。
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