土川内科小児科ニュース  8月号  No.43 もどる

  今月のテーマ:夏にはやる病気

 今年の夏は昨年以上の猛暑と言われていますが、如何おすごしでしょうか。無理をしないで、睡眠を充分にとり(できれば昼寝も上手に取り入れ)、バランスのとれた食事(食欲がないからといって、冷たいものばかりとっているとさらに食事がとれなくなる悪循環に陥り易いのでご注意を!)を心がけて夏を乗り切って下さい。冷房の温度を下げすぎると体温調節機能がバランスを崩し、だるさや疲労感がとれなくなりやすいですので、室温は外気温を参考にその差があまり開きすぎないようにすることが大切です。 四季があることが日本の良さと思います。夏は少し仕事のノルマを減らして、積極的に暑さを楽しむ位に、気持ちの上では余裕を持ちたいものです。 冬にインフルエンザがはやるように毎年夏になると、夏特有の病気が流行します。安達医師会の感染症情報によると、6月下旬から手足口病がはやりだし、それを追いかけるようにヘルパンギーナも増えてきております。そこで今月は、夏に流行する疾患を取り上げてみたいと思います。
手足口病 手足口病は名前の通り手・足・口などに水疱性発疹が見られる病気で、コクサッキーA16やエンテロ71などのウイルス感染が原因であることが分かっています。このほかにもコクサッキーA10・A4・A5・A6などによってもおきますので、異なったウイルス感染を受けたために繰り返し手足口病が現れることもあります。7月を中心として夏に多く、好発年齢は1〜4歳、潜伏期間は3〜5日です。昨年はほとんど見られなかったのに今年は非常に多いなど、数年ごとに流行が繰り返されています。伝染の様式は、気道分泌物・便の直接・間接接触と飛沫感染で、ウイルスの排泄は、咽頭から1〜2週間、便から3〜5週間と非常に長く続くため、隔離は不要とされています。ウイルスの種類により発疹のでかたに差があり、コクサッキーAでは、手と足に見られることが多いのに対し、エンテロ71では、手足のほか大腿や臀部にも見られることが多いと言われていますが、手と足だけ、手と口だけなどと、すべての症状がそろわない事も珍しくありません。発疹は通常3〜7日で跡を残さずに消退します。発熱は見られないか、あっても38度前後で、高熱が続く事はほとんどありません。のどが痛いためによだれが多くでたり、食べ物を受け付けなかったりする事がありますので、脱水にならないように刺激の少ない口当たりの良い水分を中心に与える様な対応が必要となります。ほとんどの場合、軽症で自然に良くなりますが、ごくまれに髄膜炎を合併することがありますので、注意が必要です。幼稚園や学校は、熱があったり口内炎がある間はお休みするのが無難だと思います(出席停止扱いにはなりません)。なお、便から長期間にわたりウイルスが排泄されますが、きちんと管理されたプールでは塩素によりウイルスが死滅しますので、プールによる感染の心配はまずないと考えて良いと思います。
ヘルパンギーナ ヘルパンギーナも夏から初秋にかけて10歳以下の小児(ほとんどが4歳以下)に流行する疾患です。コクサッキーA・B、エコーウイルスなど多くのエンテロウイルスが原因として知られています。ウイルスの種類が違えば何度も発症しますので、何度もヘルパンギーナになってしまうことも珍しくありません。 通常、2〜5日の潜伏期のあとに、39〜40度の高熱で発症します。咽頭痛や食欲不振、鼻汁などを伴う事もあります。発熱後まもなく、のどの奥に水疱ができ、それが破れて潰瘍となり、痛みのために食事や水分をとることができずに脱水症状が見られることもありますが、多くの場合、数日で解熱し、7日以内に治癒します。基本的にはあまり心配のない疾患ですが、幼稚園や保育園は、熱が下がって口内の痛みがなくなるまではお休みするのが良いと思います。感染予防に関しては手足口病と同じ様に考えて対処して下さい。
とびひ(伝染性膿痂疹) とびひは、あせもや虫さされ、すり傷などに細菌(通常溶血性連鎖球菌)が感染し、水ぶくれや痂皮ができたものです。病変部はむずがゆいためにかきむしり、手に細菌が付着します。その手で別のところをかくと、そこに傷ができて新しい病変ができ、次々に化膿性の病変が火の粉が飛ぶように広がっていく事から、この病名がついています。 伝染力が強く自分自身で病変部を増やすと同時に、兄弟やお友達にも細菌の着いた手を介して感染が広がっていきます。この病気も肌が露出して、虫さされなどの機会の多い夏に多く見られます。とびひはあせも、湿疹、虫さされ、すり傷などがある時に、汚れた手でひっかくことによって始まりますので、元々の病変をきちんと治しておくことと、皮膚や手を清潔にしておくことが治療上も予防的観点からも大切なことです。 治療は抗生物質の内服と抗生剤の入った軟膏の塗布、皮膚の消毒などを組み合わせて行います。ひっかくのを防ぐ目的でも、病変部を乾燥するまでふさぐ方が良い様です。 幼稚園や学校を休む必要はありませんが、プールはとびひが乾いて感染の心配がなくなるまではお休みさせて下さい。
口の中が痛むとき家庭での対策
  • 口の中が痛い時には無理をさせないで、水分の補給を中心に考えて下さい。柑橘類のジュースは酸味があるためにしみますので、牛乳や麦茶、イオン飲料、野菜スープ、みそ汁等がおすすめです。
  • カロリー補給のためには、プリンやゼリー、アイスクリームなど好きなものを与えて下さい。酸味や塩味がきついものや固いものは刺激となりますので、お豆腐やお粥、うどん、ウーメンなどが良いと思います。本人がほしがる様であれば、特に制限する必要はありません。
  • 入浴は高熱がない限りは問題ありません。暑い季節ですので、シャワーなどでさっぱりさせたいですね。
  • 水分もなかなかとれずに元気がなくなってきた時には点滴が必要となります。早めに受診しましょう。
「水いぼ」と「茄子のへた」 水いぼは、正式には伝染性軟属腫と呼ばれ、伝染性軟属腫ウイルスが直接接触することにより感染します。水を介して伝染することはありませんので、水いぼがあるからと言ってプールを禁止する必要はありませんが、水いぼがたくさんある場合には、ビート板や浮き輪、タオルの共有はしない等の配慮が必要です。時々水いぼの治療に関して、すぐに取るか、放置しておいて良いかが議論になります。放置しておいてもいずれは自然になくなりますので、数がどんどん増えたり大きくなる場合を除けば放置でかまわないと思います。ところで、最近この水いぼを茄子の実の部分でこすることで良くなるとの情報を入手しました。もったいないので通常捨ててしまうへたの部分を利用する事が多いそうですが、ダメでもともと位の気持ちでチャレンジしてみては如何でしょうか。1日2〜3回こすっていると、早い人では2〜3日でなくなるとの事です。1週間経っても変化がない場合には、この方法では効果の出ないタイプとお考えくださいね。
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