健康最前線(No.74)
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今回のテーマ:予防接種
安達医師会管内では、麻疹の小流行が時々見られておりますが、麻疹に罹患するのは、予防接種を受けていなかった方がほとんどで、ある小学校の流行では、その学年で麻疹の予防接種を受けていなかった児童7名中6名が麻疹に罹患しました。また私の診療所でも、6人兄弟が麻疹の予防接種を受けていた1人を除いて、全員が次から次へと麻疹に罹患しましたが、この様なケースを経験すると予防接種の必要性を痛感します。定期接種の対象となっている感染症はどれも罹患すると大変なものばかりですので、はじめにしっかりと計画を立てて、上手に受けてほしいと思います。
定期接種として受ける予防接種は、BCG、ポリオ、三種混合、麻疹、風疹、日本脳炎がありますが、これらの接種回数を合計すると12回にもなります。したがって計画性を持ってこなしていかないと、未接種のまま時間がどんどん過ぎていってしまう事になってしまいます。
予防接種には生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があり、生ワクチンは接種後4週間あけないと次のワクチンは受けられません。これに対して、不活化ワクチンは1週間で次のワクチンが受けられるようになります(ただし、三種混合を続けて受ける場合には、3週間あけなければなりません)。
具体的に、一歳までに受けておくべきワクチンは、BCG、三種混合、ポリオの3つ。 この3つのワクチンをどの順番で受けるのがベストかについては、色々な意見がありますが、3ヶ月を過ぎたら、まずBCGを受けるのが良いでしょう。乳児期の粟粒結核や結核性の髄膜炎などの重症結核を防ぐ効果は、80?90%と言われており、平成17年4月からは生後6ヶ月までに受ける様に変更になったからです(安達医師会管内では3ヶ月以降6ヶ月未満)。なお、以前はツベルクリン反応で陰性を確認後に実施しておりましたが、変更に伴いツ反なしで直接BCG接種を行います。
まだ体力のない乳児期に百日咳にかかると本当にかわいそうですので、次に受けるのは、三種混合ワクチンです。乳幼児期の三種混合は、3週間〜8週間の間隔で合計3回、その約1年後1回の計4回です。小さいうちは良く熱を出しますので、はじめの3回は3週間間隔で受けるつもりでいて、風邪などのために少々遅れてもそれぞれの間隔が8週以内に収まるような工夫が大切です。8週をすぎると絶対にダメではありませんが、効果が薄れてしまいますので、ご注意下さい。なお、このワクチンは沈降ワクチンですので、接種部位に小さなしこりが一〜二ヶ月残りますが自然になくなりますので心配いりません。
次に、ポリオですが、ポリオは集団接種で行われるため、受けることのできるチャンスが限られています。幸い、日本では野生株によるポリオの発症はありませんので、あわてて受ける必要はありませんが、1歳前に1回は受けておくと安心です。ポリオの日程は各市町村で決められた日時に受けることになりますので、ある程度はポリオに合わせて他のワクチンの日程を調整しなければなりませんが、ポリオを受けるために他の重要なワクチンの接種が大幅に遅れるような場合には、ポリオが後回しになってもかまわないと思います。 
1歳のお誕生日が過ぎたら、真っ先に受けたいのが麻疹ワクチンです。麻疹は罹患するととても怖い病気ですが、予防接種の効果は抜群ですので、辛い思いをさせないためにも早めに受けておきたいです。
麻疹のあとは、健康状態がきわめて良好な時期に余裕を持って風疹を受け、3歳すぎたら日本脳炎をはじめの年に2回、翌年1回で終わりです。日本脳炎は季節性の強い疾患ですので、夏直前(6月)に受けるのがベストです。冬に受けるのは、ワクチンの効果が持続する期間を考えると避けるべきでしょう。
何らかの理由で遅れてしまった場合は、できるだけ早く対応を相談して下さい。色々なケースがありますので、ここでは詳細に触れませんが、遅れたことによるマイナスをカバーするのには対応が早ければ早いほど有利です。どうせ遅れてしまったからいつでもいいやなどと言うような事がないようにお願いします。
予防接種を受ける時間は、午後二時頃までがベスト。私の所では、午後の一時から二時に限定して行っているのには訳があります。まず「予防接種は一般外来とは分けて行うこと」となっています。これを無視して行った場合には、副反応が起きた時などに国の保証が受けれられない可能性があります。そこで、一般外来とは別に午後の早い時間を予防接種の専用時間帯とし、一般外来の患者さんは原則として受け付けない様にしています。待合室を別にすればもっと時間帯を広げることは可能ですが、空気感染の感染症では、単に待合室を別にしただけでは不十分ですし、感染症の患者さんを診察した聴診器や白衣でそのまま予防接種を行うことは好ましくありません。また、予防接種後の副反応のうち、重篤なものは数時間以内に起きる可能性が高いので、接種を受けて万が一具合が悪くなっても診療時間内であれば、迅速な対応が可能です。さらに、万が一の時に対応を依頼する可能性のある入院設備のある後方病院も夕方以降は手薄になっております。そのような不利な条件で予防接種をすることは避けるべきでしょう。転ばぬ先の杖と言ったところでしょうか・・。
予防接種はどこで受けても同じではありません。お子さんの事を良く知っているかかりつけ医、予防接種の経験が豊富で、製剤の改良などの情報に明るい専門医が望ましい事は言うまでもありません。
予防接種を受ける午後一時頃の体温を普段から何度か測って知っておいて下さい。37.5℃以上あれば、予防接種はできませんが、37℃前半の場合、普段通りなのか、今日はいつもよりも高く、夜にもっと高くなる可能性があるのかの区別が難しい時が良くあります。一般的に午後の体温は朝の体温よりも高く37℃前半というお子さんも結構いらっしゃいますので、普段通りなのかどうかの判断ができるようにしておく事は非常に大切なことです。
予防接種のスケジュールをたてるのは慣れないと難しいので、実際に一つ受けるたびに次は何を受ければ良いのかを聞くと良いでしょう。
接種が遅れてしまった場合の対応の一例:三種混合の後は一週間たてばほかのワクチンを受けることができます。一方、麻疹や風疹の後は4週あけなければなりません。また、三種混合同士は3週から8週の間に受ければ良いので、下記の様なスケジュールですと早く終了する事が可能となります。この方法と同じパターンを三種混合とBCGでも行う事ができます。
三種混合1期初回@
↓  7日
麻疹
↓ 28日
三種混合1期初回A
↓  7日
風疹
↓ 28日
三種混合1期初回B
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