健康最前線(No.76)
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今回のテーマ:重症急性呼吸器症候群(SARS)
重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome 略してSARS)がマスコミなどの報道でご存じの様に中国を中心に流行し、世界中を大きな不安に陥れております。今回はこの疾患について、福島県重症急性呼吸器症候群対応行動計画を参考にしてとりまとめてみました
重症急性呼吸器症候群(SARS)とは
  • 定義:中国広東省に端を発し、香港、北京など中国の他の地域にも拡大し、また、台湾、カナダ、シンガポール、ベトナムなど世界中のいくつかの国でも大きな問題となっている新しく発見された感染症です。
  • 原因:WHOは新型のコロナウイルスが原因と断定しました。
  • 症状:38℃以上の発熱、咳、息切れ、呼吸困難などで、胸部レントゲン写真で肺炎または呼吸窮迫症候群の所見(スリガラスのような影)が見られます。また、頭痛、悪寒戦慄、食欲不振、全身倦怠感、下痢、意識混濁などの症状が見られることもあります。
  • 感染経路:患者の飛沫及び分泌物(鼻汁等)を通じて感染すると想定されています。また、患者との密接な接触が必要と想定されています。
  • 潜伏期間:2日から10日の範囲と考えられています。
症例定義
  • 疑い例
    • 38度以上の急激な発熱・咳、呼吸困難感などの呼吸器症状
    • かつ、以下のいずれかを満たす者
      • 発症前10日以内に、原因不明の重症急性呼吸器症候群(以下「SARS」)という)の発生が報告されている地域(注)に旅行したもの
      • 発症前10日以内に」、SARSの症例を看護・介護するか、同居しているか、患者の気道分泌物、体液に触れた者
      • (注)WHOが5月31日現在、勧告している地域:カナダ(トロント)、中国(北京・広東・河北・香港・湖北・内蒙古自治区・吉林・江蘇・山西・陝西・天津・台湾
      • ※勧告地域に関する情報は時間と共に変化しますので、最新情報は「こちら」で確認してください。
  • 可能性例
    • 疑い例であり
      • 胸部レントゲン写真で肺炎、又は呼吸窮迫症候群の所見を示す者
      • 原因不明の呼吸器疾患で死亡し、剖検により呼吸窮迫症候群の病理学的所見を示したもの
問題が発生した場合の対応
  • 急な発熱があった場合:38度以上の急な発熱や呼吸困難感などの症状がみられた場合、もし発症10日以内に伝搬確認地域または可能性例が報告されている国に渡航歴がある方は、最寄りの保健所に相談するか、指定の医療機関を受診してください。
    • 医療機関を受診する場合事前に症状や渡航歴などについて必ず電話で連絡してください(受入体制を準備する必要があるので)。  
    • 医療機関から疑い例または可能性例の診断を受けた場合:万一の感染拡大防止のため、保健所からそれまでの家族や職場の同僚などとの接触状況について聴取されるとともに、家族や職場における消毒などの感染防止策についての指導があります。
  • 空港到着時に急な発熱等があった場合:検疫所が問診を行います。問診の結果、疑い例の可能性がある場合には、医療機関の受診を勧められますので、必ず事前に医療機関に電話連絡し、できるだけ人との接触を避け、帰宅前に受診してください。なお、空港で待機医師による診察を行う場合があります。また、やむを得ず帰宅する場合は、マスク(N95マスク、外科用マスクが望ましい)を着用すると共に家族など、人との接触を出来るだけ避けてください。
  • 家族が中国などの発生が報告されている地域から帰国する場合:帰国までにSARSの症状がなければ、帰国を制限されることはありません。帰国者は原則として行動を制限されることはありませんが、帰国後10日間は、発症(急な発熱等)の有無に細心の注意が必要です。 したがって、10日間は自主的にマスクを着用するとともにできるだけ人との接触は避けてください。
県北医療圏で受診可能な医療機関必ず事前に電話連絡をしてから受診してください!
  • 福島医大付属病院(024−548−2111)
  • 福島赤十字病院(024−534−6101)
  • 大原総合病院(024−526−0300)
安達医師会管内でSARSの可能性のある患者さんの対応ができる病院は、二本松病院、枡記念病院、枡病院、谷病院の4医療機関のみです。SARSを心配な時には、受診する前に「必ず電話で」これらの医療機関にどうすれば良いのかをご相談下さい。

 ※一般の方への感染を防ぐため、電話なしの直接受診は絶対にしないでください
日常的な予防対策:SARSの感染経路として、空気感染の可能性は否定できないものの、飛沫感染が最も感染機会として多いものと考えられています。感染源となるSARS患者と接触する機会が少ない一般の人においては、花粉症やインフルエンザの予防に用いられている通常のマスクの着用が、十分とはいえないもののSARS患者からの飛沫感染予防の効果があり、実際的な方法であると考えられます。また、手洗い、うがいの励行等の予防策についても併せて実施することがSARS感染を予防する上で重要です。 なお、N95マスク、外科用マスクは、医療現場において患者に濃厚に接触する医療従事者等が、特殊な場面での使用のために製造されているものであり、日常生活で一般の人が用いるには、呼吸が苦しくなり、実用的ではありません。
不安を抱いた場合の相談窓口:SARSに関して疑問や不安がある場合には、次の機関に相談窓口が設置されておりますので、お気軽にご相談下さい。なお、相談時間は月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分までです。  
  • 福島県保健福祉部健康衛生領域:024−521−7238
  • 県北保健福祉事務所生活衛生部:024−534−4113
  • 県中保健福祉事務所生活衛生部:0248−75−7818
  • 県南保健福祉事務所生活衛生部:0248−22−6405
  • 会津保健福祉事務所生活衛生部:0242−29−5512
  • 南会津保健福祉事務所健康福祉部:0241−63−0305
  • 相双保健福祉事務所生活衛生部:0244−26−1328
  • 郡山市保健所地域保健課:024−924−2163
  • いわき市保健所地域保健課:0246−27−8595
コロナウイルスとは:電子顕微鏡で見た場合に、ウイルス表面から花弁状の突起が出ていて、太陽のコロナのように見えるウイルスをまとめてコロナウイルスと言っています。今までも、ヒトにかぜ様症状をおこすものがあることは知られていましたが、症状は軽度〜中等度であり、SARSのように重症な病気をおこすものは知られていませんでした。また動物では、たとえばブタ、ニワトリなどに呼吸器系、消化管、肝臓、神経系などの病気をおこすコロナウイルスが知られていました。しかし、SARSコロナウイルスは、従来のコロナウイルスとは遺伝子的にかなり異なるもので、どのようにして出現したかは、不明です。しかし、コロナウイルスのなかで、動物にだけ感染するはずのものが、変異をおこしてヒトに感染するようになることはあり得ますし、もともとヒトに感染していたコロナウイルスがやはり変異をおこして、今までより病原性が強くなる、すなわち重症な病気をおこすようになる可能性もあります。
■ 参考資料
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