土川内科小児科ニュース  2月号  No.25 
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  今月のテーマ:ポリオについて

インフルエンザが今年も猛威をふるっておりますが、皆様いかがお過ごしですか。運悪くかかってしまった時には無理をしないで安静療養に努めて下さい。ところで、昨年十二月十五日、厚生省は、ポリオ(小児まひ)に対する免疫が、ある特定の年代の方たち(昭和50〜52年生まれ)に限り、有意に低いことに関する情報を発表致しました。非常に重要な問題ですので、今月は予定を変更し、この件について取り上げることに致しました。以下、厚生省の発表の資料からの抜粋です。原文は、こちらにあります → http://www.mhw.go.jp/topics/polio/tp1215-1_11.html#a
(1)ポリオ(小児まひ)について:ポリオに感染した人の便中にポリオウイルスが排泄され、これが口に入ることによって感染します。ウイルスに感染しても、90〜95%の人は何ら症状が出ないで免疫ができます。5〜10%の人はカゼ様症状を呈し、感染者の0.1〜0.5%に麻痺が現れ、永久に麻痺が残ったり、呼吸困難により死亡することがあります。
(2)ポリオに対する免疫について:ポリオウイルスに感染すれば症状が出なかった方にも免疫ができます。また、ポリオワクチンの予防接種により免疫ができた方についても同様です。免疫ができれば、ポリオにかかる心配はありません。
 厚生省の流行予測調査事業において、免疫を持っている人の割合(抗体保有率)は、昭和50年から52年生まれの方については、T型という種類の抗体保有率がやや低くなっていることが明らかになっています(図1参照)。
図1抗体保有率(通常は80〜90%)
昭和50年生まれ 56.8%
昭和51年生まれ 37.0%
昭和52年生まれ 63.8%

 日本にはポリオウイルスはいないと判断されていますが、免疫を持っていない方が、ポリオ常在国(1995年に年間100名以上の発生が報告されている国は、チャード・コートジボアール・エチオピア・ナイジェリア・ウガンダ・ザイール・イラン・パキスタン・ロシア・インド・バングラディッシュ・カンボジア・ベトナム)に旅行した場合、ポリオに感染し発症する可能性があります。ポリオウイルスに感染した場合、200人から1,000人のうち1人の割合で麻痺が現れています。
 また、現在、接種されているポリオワクチンウイルスは体外に排泄されます。このワクチンウイルスが人から人へとうつっていく間に、弱めた毒性があともどりして強い力を持つようになり、発症するという可能性があります。日本でワクチン投与(乳幼児に投与)に関連して発生したと思われる麻痺患者の割合は、約200万回の投与に1人で、その内訳は、接種を受けた本人に関しては約400万回の投与に1人、接種を受けた者から感染し、免疫を持っていない家族等が麻痺をおこした人に関しては約500万回の投与に1人などとなっています。
 以上ポリオ及びポリオワクチンの概略について説明いたしましたが、これらをごらんの上さらに(5)の接種を受ける場合の注意事項をご参考の上、接種を希望される方については、次に示す時期に、ポリオワクチンの予防接種を受けられることが適当です。

昭和50年から52年に生まれた方で、
@ ポリオウイルス常在国に渡航される時
A お子さまがポリオワクチン接種を受け る時(受ける時期はお子さまと同時期)

 なお、希望により、抗体検査実施後、予防接種を受けることも可能ですし、抗体を有している方が予防接種を受けたとしても、特に副反応の発生する率が高くなるということはありません。上記年齢以外の方についても希望されれば、予防接種を受けることも可能です。
 以上の場合の予防接種は法律に基づくものではなく、任意接種の対象となりますので、自費で接種を受けることになります。また、抗体検査費用についても同様に自費となります。
 なお、以下に免疫効果、大人に対する副反応等について詳しく説明します。
(3)ワクチンの免疫効果について:ポリオ生ワクチンによる抗体保有率は、平成6年度の流行予測調査事業によれば、1回投与の場合はT型で92%、U型で99%、V型で66%、2回投与の場合はT型で98%、U型で99%、V型で87%となっています。
 ある型について免疫がなくても、別の型の免疫を有していれば、その型に対する免疫効果もある程度有していると考えられ、2回の予防接種を受けていれば、必要な免疫を得られると考えられています。
 なお、子供の時にポリオの予防接種を2回受けていれば、今回の追加接種は1回で必要な免疫が得られると考えられます。
(4)大人に対するポリオ予防接種の副反応について:ポリオ生ワクチンは副反応のほとんどない安全なワクチンですが、接種を受けた方又は接種を受けた方の家族等で免疫のない方が、きわめて稀に、生ワクチンのために起こったのではないかと考えられるような麻痺を起こす例があります。
 その割合は、(2)で述べたとおりですが、これは乳幼児に接種した場合の結果ですので、大人への投与によって副反応がどの程度生じるかはよくわかっていません。
 なお、1984〜1985年にかけてフィンランドでポリオが約20年ぶりに流行した時に、1985年に全人口(約480万人)の96%に対して、ポリオ生ワクチンの予防接種が行われましたが、大人にも子供にもワクチンによって麻痺が発生したという報告はありませんでした。
 また、1994年、1995年に自衛隊員がPKOで海外派遣される時に、約7,400人の方がポリオ生ワクチンの予防接種を受けましたが、副反応の報告はありませんでした。なお、30歳を越えると麻痺出現率が高くなると記載されているテキストブックもありますが、この記載は根拠に乏しいとする意見もあります。
(5)接種を受ける場合の注意事項:一般の予防接種の注意事項と同じですので省略します。

この資料は平成8年11月に都道府県向けに発表されたものですが、昨年暮れに一般向けに再び発表された理由は注意を喚起するためと思われます。この問題は、該当する年齢の方々がそろそろ結婚適齢期となり、若いお父さん・お母さんとなる年齢にさしかかってきているという点で、早急な対応が望まれるものです。現在の時点で、安達医師会管内では、まだ具体的な対応策は発表されておらず、希望者は郡山又は福島まで出かけて自費で接種しなければなりません。なぜ、ある特定の年齢層の人たちのみがうまく免疫ができなかったのかについての原因ははっきりしておりませんが、公費で行われた予防接種の結果がうまくいかなかった訳ですので、当然希望者には公費で、追加接種がなされるべきではないかと私は考えております。先日市に打診したところ、いろいろと微妙な問題があるようですが、前向きに検討中とのことでした。何か新しい動きがありましたら、院内報などでご報告したいと思います。
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