土川内科小児科ニュース  4月号  No.27 
もどる

  今月のテーマ:CRP

 今年のインフルエンザは、二月を間に挟んで、一月の下旬と三月の上旬とに流行のピークを2つ持ち、ようやく終息したようですが、皆様はいかがだったでしょうか。一月の時にはピークが過ぎても流行流行と騒ぎ立てていたマスコミも三月の流行には、全く何の反応も示しませんでした。世論の反響を期待するような情報の流し方はやめて、事実を的確かつ速やかに提供する様にお願いしたいと思います。また、今年の冬には、流行を先取りするような予防的な観点に立った報道を期待したいものです。
表1:C反応性蛋白(CRP)陽性を示す主な疾患
*感染症:細菌、真菌、寄生虫、原虫、ウイルスなどによる各種・各臓器感染症
*外科系疾患:外傷、火傷、手術後
*循環器疾患:心筋梗塞、心内膜炎、心外膜炎、大動脈炎症候群
*呼吸器疾患:胸膜炎、肺炎、肺膿瘍、膿胸
*消化器疾患:潰瘍性大腸炎、クローン病、急性膵炎
*結合織疾患:慢性関節リウマチ、ベーチェット病、皮膚筋炎、変形性関節症
*代謝性疾患:痛風
*神経系疾患:髄膜炎、脳出血
*悪性腫瘍:胃癌、肺癌、大腸癌、子宮癌、骨髄腫、悪性リンパ腫
                             検査診断ポケットブック(金原出版)より
ところで、当院では今年の1月からある画期的な検査機器を導入致しました。末梢血検査(白血球数の測定)とC反応性蛋白(CRP)を同時に測定できる機器なのですが、これにより非常に的確な診断及び治療が展開できることとなりました。そこで、今月はこのC反応性蛋白を中心テーマとして取り上げて見ました。C反応性蛋白は、あまり聞き慣れない検査項目かと思いますが、肺炎球菌の成分であるC多糖体と反応する蛋白という事から命名されたものです。その本体は感染症や組織破壊などの刺激により、肝で産生される蛋白の一種です。正常者にはごく微量しか存在せず、表1の様に、各種炎症性疾患や組織崩壊を伴う炎症性変化がある時に、急速に血中濃度が上昇しますので、急性および慢性の炎症性疾患存在の有無を調べるときに非常に役に立つ検査項目です。また疾患活動性(炎症の程度)ともよく関連して変化しますので、病状を把握するための検査としても非常に有用です。よく知られている検査項目に「血沈」がありますが、CRPは、ごく一部の例外を除き、血沈の亢進とよく相関します。しかし、血沈よりもその変化が早い(炎症がおこると約10時間後には血中に出現し、炎症が 修復過程に進むまで検出される)事もCRPが臨床上非常に有用な検査である理由の一つで、実際によく利用されております。
 一方、欠点としては、疾患特異性が無いことがあげられます。つまり、体の中で炎症が起きていれば、その原因が何であっても上昇しますので、CRPが高値というだけでは、どのような疾患が起きているのかまでは知ることはできません。
CRPの測定結果とその判断
0〜0.6    (−) 3.8〜5.6  (3+)
0.7〜1.0  (±) 5.7〜8.2  (4+)
1.1〜2.0  (+) 8.3〜12.0 (5+)
2.1〜3.7 (2+) 12.0〜    (6+)
CRPの正常値は、0.6以下で、炎症の程度が重くなるほどその数字は高くなります。通常の風邪(普通感冒)では、0.6以下の事が多いのですが、気管支炎、肺炎などが合併したり続発したりするとこの数字が高くなっていきます。肺炎などの重篤な疾患がある場合には、5.0以上となります。具体的な数字として結果がでてきますので、より客観的な診断を下すことができます。当院ではこれまでもこの検査を5日以上発熱が持続する時など、必要に応じて実施しておりましたが、外の検査センターに委託しておりましたので、結果が出るのが翌日でした。夕方近くに受診された場合には、結果が翌々日というケースもありました。また一時、定性法(結果がマイナスかプラスででてきます)を取り入れた事もありましたが、マイナスかプラスかだけではあまりにも大ざっぱすぎて、病状の把握が十分にできないという問題に直面しました。そこで、今回、新しい機器の導入に踏み切ったのですが、それにより約5分で結果が出てくるようになりました。症状や診察結果にこの検査結果を総合して判断することにより、より正確な診断が迅速にできるようになった訳です。しかし、人間の体は機械の様 に単純ではありません。CRPが1.2程度でも、レントゲン写真を撮ってみると肺炎だったり、逆に咳や痰がそれほどひどくなく、レントゲン写真も正常なのに、CRPが4.5などというケースも中にはあります。ですから、より客観的な診断が可能になったとはいえ、これまでどおり病歴・聴打診・触診を中心とした臨床所見に基づく慎重な診断が大切なのは言うまでもありません。
さらに、非常に有用で大切な検査項目に白血球数があります。白血球数はご存じのように細菌感染症の時に上昇し、ウイルス感染症の時には正常または低値を示します。今回の機器は一回(一本)の採血でこの白血球数とCRPを同時に調べることができますので、患者さんのご負担もより少なくてすみます。特に赤ちゃんの様に採血が大変な場合、ごくわずかの血液で両方が測定できる事は、特筆に価します。 
 時代の進歩と共に、医療機器もどんどん便利なものが出てきております。これらを積極的に取りいれて、良質の医療サービスを提供していきたいと思います。
乳幼児医療費助成対象年齢の引き上げ
 平成11年10月から子育て支援(少子化対策)の一環として乳幼児医療費助成の対象年齢が、これまでの3歳から6歳未満に引き上げられます。保護者の負担軽減を図り、乳幼児の疾病・負傷の早期治療を促すことが目的です。最近、重症にならないと受診しない方が増えているように思います。子供の病気は特に早期治療が大切です。お子さんが小さいうちは特に早め早めの受診を心がけて下さい。
ポリオワクチンのその後
 先日来問題にしてきました昭和50年〜52年生まれの方がポリオに対する抗体価が低い件ですが、法で定められた定期接種ではないために、保健センターなどの公的機関で接種を行うことは現段階では不可能との結論に達しました(二本松市民生課保健係)。そのため、安達医師会では、市の民生課と相談の結果、乳幼児の集団接種が行われる週に、次の日程で希望者に対して個別接種を行うことに致しました。6月26日(金):岩本医院、10月7日(金):森小児科医院、平成12年2月18日(金):土川内科小児科。ポリオは特殊なワクチンのため、事前予約が必要です。ご協力の程よろしくお願い致します。一方ポリオの撲滅も順調に進んでおり、世界保健機構(WHO)によると、1994年に南北米大陸でポリオの撲滅宣言が出され、アジア太平洋の27カ国・地域で過去2年間感染者が出ておりません。あと1年間、感染者が出なければ同地域でも撲滅が宣言されます。昨年世界で報告されたポリオ感染は、3228件で、うち2500件がインド、250件がパキスタンでした。同地域でもワクチン対策が現在進行中ですので、2003年には全世界で撲滅が宣言できるのではないかと 報告されています。
トップへ